予言と矛盾のアクロバット

菅かおる+向井麻理+間部百合

「TIME TRAVELER’s Cooking Party (原始の夕餉 vol.1)」

2013年11月09日|京都

「TIME TRAVELER’s Cooking Party (原始の夕餉)」 菅かおる+向井麻理+間部百合 タイムトラベラーズクッキングパーティーは、集まった人々で、様々な時代の料理をいっしょに考え創作し、食するパーティーです。 料理をすることは人間が初めて行なった希望に満ちた共同作業ではなかったでしょうか。 ここではある程度想像をすることが必要になる時代の料理を、一緒に考えてつくり出すことを目的のひとつにしたいと思っています。 そして、食事の場が生み出す、様々な言葉と光景を記録したいと思います。 vol.1は(ゴーギャン婦人の会)の方々と、原始時代の料理をつくります。 菅かおる G S Garden at Nohant1 2013/11/9 京都にて(記録メモ) 美味しいものを食べながら会話するというシンプルな場が生み出す魅力について最近よく考えていて、また、原始的なパワーについて、根源的なものが持つ魅力について何かできないかと思った。 予言と矛盾のアクロバットは「想像し難い未来に対する備え」という副題がついている。 ならば未来について考える為にまずは原始時代に戻ってみることにして、また、何度も開催することを予定して、「TIME TRAVELER’s Cooking Party(原始の夕餉)」とした。 まず始めに、夕餉を行なう場所を探し、京都なら鴨川のほとりか、嵐山のあたりか、または誰かの庭先か、とにかく野外で、気持ちの良い場所が良かった。 そして私のイメージにぴったりな場所を、ドラクロワの絵画「George Sand’s Garden at Nohant」中に見つけた。気持ちの良さそうな樹々に囲まれていて、それでいて完全に原始的な風景ではなくて、人が居て文化のある気配。でも何か懐かしい根源的なものを想起させてくれるような場所。Web上でイメージ写真に選んだ後、この絵について調べた所によると、この絵はドラクロワの友人ジョルジュ・サンドの庭が描かれていて、彼女は作家であり当時の画家や作家仲間をよく家に招いていたという。この庭は様々な食事と会話が生まれていたに違いない場所だった、と想像できる。 この絵に魅かれたことで、私は個人的にそのような会話の起こる場所に郷愁のようなものを感じていて、そのような場所をとても欲しているのだと発見した。 それと同時に、向井麻理が出してきた原始の夕餉のキーワードのひとつに「パンの会」があった。パンの会は享楽の神である牧神のパーンと、ベルリンの芸術運動「パンの会」に因んだ、日本の浪漫派の芸術家達が語り合う場で、東京近辺にある川をセーヌ川と見立てて発生したヨーロッパに対する憧れを含んだ芸術運動だった。 間部百合が出してきたキーワードは「ゴーギャンの婦人達」だった。ゴーギャンの絵にはヨーロッパの文明が求める楽園が描かれている。既に私達のまわりで普段行なわれている、何人かの友人で集まって保存食作りをしたり、せっせと布を縫って協力してトートバッグを作ったりしている姿をみて、ゴーギャンの絵に描かれた女性達のようだと思っていた。 ドラクロワは南方へと旅して原始的な美に対する憧れを持った画家だった。それはゴーギャンへと続いて終わりを告げた。 「TIME TRAVELER’s Cooking Party(原始の夕餉)」という言葉のもとに出て来たいくつかのキーワードは、自然に多方面に繋がっていった。浪漫派、反自然主義、ギリシャ、楽園、絵画の中の熱帯など、などなど。 今回は実験する為に、とくに告知をしないイベントとして行い、記録だけを撮った。公開するにはまだ壊れやすい楽園になると思ったからだ。 ほとんどアドリブでパーティーは進んだ。 料理をする為に野外に出向くのはやめ、室内を野外に変えてしまおうという発想の転換により向井麻理が木を切って室内に運んでくれた。 分けてもらった古代米と買って来た沢山のフルーツを持ち込んだら、その場で婦人会のF様がオニギリとジャムを作ってくれた。 間部百合が森や水の写真を持ち込んで登場し、それらを皆で木の周りに吊るしたり置いたりしてみた。 その写真に私がその場でくつろいでいる女性達のフォルムを描いた。 公開していなくても何人かの知り合いやその友人がやってきて、一体何をやっているのか分からないまま、その場の雰囲気を楽しんでいった。 楽園などこの世に存在しない。 それでもそれを追い求めることは必要なことだと思う。楽園を追い求めることをやめてつくり出す試みも必要であると思う。 ある地点で止めておけたら良いと思う。中間の場所。そうすれば楽園は壊れないしつくり出せるかもしれないな、というのが今回の抽象的な発見。 何か実験してみたいことをやろうと行動することで、重要なキーワードが繋がっていくというのがもう一つの具体的な発見。 次もその先もこのような試みを続けていきたいと思っている。このような場におつきあい頂ける方々と共に、次へと繋げていきたいと思う。 2013年11月 菅かおる IMG_2027 IMG_2074