「予言と矛盾のアクロバット」は、2015年に開催が予定されている京都国際芸術祭パラソフィアをひとつのきっかけに、言わば、近未来の祭事に背中を押された格好で、関心をよせる者たちが勝手に未来の大型国際芸術祭を模索し思索し試作していくプロジェクトである。それは例えば、こうあってほしい未来を描くことではない。むしろ、そうならないための第一歩を創造してみる。そのためのプラットフォームのようなものだ。さらに言えば、映画や小説などにみられる人類の終焉・破局的な未来を、現実に起こり得る可能性のあるものとして捉え直すこと。あるいは成就における祈願のちからを嘲笑しないこと。つまり、アートを通じて予言的なものと向き合い、想像しがたい未来に対して仮説的に備えてみる。そんな実践となるだろう。
とはいえ、「予言と矛盾のアクロバット」という現在行きの未来からのバスは、まだ停留所を出発したばかりだ。道中ではおそらく、未来での決定事項がことごとく「未定」なモノやコトへと変わっていく様子を車窓から眺めることができるだろう。それは「決定」ではなく「未定」によってモノゴトが進行していく。そんな世界ではないだろうか。妙な言い方ではあるが、つまり、既に運用されている仕組みや誰もがそういうものだと思うことを一旦 「未定」のものとして扱うことで、現実を見つめなおしていくこと。そんなふうに考えられるだろう。未来に向かうということは、現在から恐る恐るでも一歩を踏み出してみる必要があるのだから。もちろん、踏み外すことだってありえる。そんなときは、繰り返し踏み直し、繰り返し踏み外してみても良いのではないだろうか。
変幻自在にかたちを変えながら実施される予言と矛盾の三回転半ひねり『予言と矛盾のアクロバット』は2013年9月より京都を皮切りに実施されていく。そして最終的に得たもの、失ったもの、そのひとつひとつを念入りに検証していきたい。
2013年7月
増本泰斗